
今回のシェアリングアンサーは、
踵部痛に対する評価〜アプローチについて解説していきます。
踵部痛と聞くと、原因として足底腱膜を1番に思い付く方が多いと思います。
臨床では足底腱膜以外にも【踵部脂肪体】由来の踵部痛も考えられます。
本記事では、そんな踵部脂肪体についてまとめていきます^ ^
踵部脂肪体とは
その名の通り、踵の下にある脂肪体のことです。大体この辺りにあります。
踵骨の下は、脂肪組織に満たされています。
踵から皮膚までの順で示すと、
踵骨→足底腱膜→踵部脂肪体→皮膚
の順。
この脂肪体の機能は一体何かを考えてみると、踵という特徴から察するに【荷重時の衝撃吸収】とされています。
正常歩行の衝撃吸収機構は、ヒールロッカー機能が広く知れ渡っていますが、
足関節の柔軟な動きの前に「踵部脂肪体による衝撃吸収」が先に始まります。
つまり、アンクルロッカーや膝や股関節の機能での衝撃吸収がいかに機能していても、踵部脂肪体への負荷は中々軽減しにくいと考えられますね。
※もちろん、他関節の衝撃吸収機構が機能していなければ、そこの改善で脂肪体への負荷も減る可能性はありますが。
そもそも歩行は、
下位に位置する慣性のより小さい部位が接地時に衝撃力に素早く応答し、より上位にはほぼ一定の衝撃加速度を伝播する様式になっている(1)
とされています。
やはり、足関節や踵部脂肪体といった遠位の構造が衝撃吸収を賄っているといえますね。
踵部脂肪体の異常
異常とは、端的に言うと「脂肪組織の減少&硬度低下」です。
加齢や過度な荷重刺激により、これらの問題が生じ得ます。
これらによる具体的な傷病名としては、
① 踵部脂肪褥炎
② Heel Fat Pad Syndrome
が知られています。
①は、踵部脂肪体の厚が減少することで、踵骨隆起の下縁が地面に接地しやすくなることで生じる踵部痛です。
より高齢者に多く、踵部隆起下縁に圧痛があります。
②は、踵骨と踵部脂肪体の間の剪断力が原因で踵部痛が生じます。
発生はアスリートや中高年にみられ、踵部全体に痛みがあります。
何にせよ、踵部脂肪体が原因となり発症します。
踵部脂肪体の評価
定量化された理学評価は、私の知る限りありませんでした。
臨床的な評価をいくつかご提案します。
○踵接地時にのみ痛みがあるか?
足底腱膜が問題であれば、立脚後期のウィンドラス機構により足底腱膜が緊張し、この時にも痛みが出やすいです。
歩行周期のどのタイミングで痛みが出るか?での鑑別もオススメです。
○踵接地での痛み評価
上記の評価につながりますが、踵から接地するステップ練習を行い、痛みが再現されるか確認します。
○踵骨下脂肪体の厚みの左右左はあるか?
左右の踵を触れて、踵骨が簡単に触れるか?で判断します。
踵への荷重刺激が弱まると脂肪体の萎縮が見られるとされています(2)
なので、
骨性の硬さを容易に触診できる方が、厚みが減少していると推測します。
○背屈可動域、足趾伸展可動域があるか?
これは足底腱膜の伸張ポジションですね。
これにより痛みが誘発されれば、足底腱膜由来の痛みも混在している可能性が出てきますね。
アプローチ
マッサージ
根本的な改善とはなりませんが、踵部全体へのマッサージを加えると、心地よいと感じる方が多い印象です。即時的な鎮痛目的やラポール形成のためにはかなりオススメです。
私自身も、踵部脂肪体を疑った時はマッサージをまず行ってます^ ^
漸増的荷重法
漸増的に踵への荷重を促したことにより,脂肪体厚が増加した結果,荷重痛が減少した。(2)との報告があります。
具体的には、軟らかい路面(クッション使用)から硬い路面へと移行し,漸増的に荷重量を負加して荷重を加えるアプローチが有効とあります。
まとめ
踵部の痛みは、足底腱膜を疑うことが多いと思います。
ですが、その痛みの特徴によっては脂肪体が原因のこともあります。
両者を鑑別する評価を行い、原因に沿ったアプローチしていただけたらと思います^ ^
文献
(1)田川善彦.山本耕之.松尾重明・他:ヒトの足接地時における人体への衝撃力の評価.日本機械学会論文集 C 編.1995, 61:3859-3865
(2)鈴木恭平.踵骨脂肪体萎縮に対する理学療法の経験.第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会.