関節モーメント 基礎と応用のススメ

今回は、関節モーメントについて解説していきたいと思います。

 

というのも、皆様からご質問いただいているご質問への私の回答は、関節モーメントを交えての内容がかなり多いと思います。

何故かというと、動作分析の過程で問題点を抽出するためには、関節モーメントは切っても切れないと個人的に思っているからです。

 

ですが、学生時代はそこまでモーメントって触れないですよね。。

なので苦手としている療法士も多くいると思います。

というわけで、本記事ではよくある基礎の説明だけではなく、臨床に応用するためにどうすればいいか?までを深掘りして解説していきます(^-^)

 

 

 

関節モーメントとは?

まずは【関節モーメント】ではなく、【モーメント】について説明します。

モーメントとは力が物体を回転させる作用の事です。

回転させる力とは、関節でいうところの関節運動のことです。

ただこれだけでは意味不明ですね。図1をご覧ください。↓

固定軸(関節)からの距離(L)の位置から、力=床反力(F)が作用しています。

このLFがモーメントを構成しています。

 

モーメント=力(F)×長さ(L)です。これはかなり大事。

 

なので、Lが長くても、Fが強くてもモーメントは強くなるというわけです。

 

では、図2を見てください。

今度は、図1と何が違うでしょうか?力が作用する距離が長くなっています。モーメントは長さ×力なので、

長さが長い分、かかってくる力が同じでも、関節運動を起こそうとするモーメントは大きくなるのです。

 

 

ここまでの説明を、足関節の図(3)で置き換えてみましょう。

この状態だと、足関節という関節軸に対して、中足骨付近に床反力が作用しています。

この場合の床反力の大きさは、体重分の力が床から跳ね返ってきていると想像してください。

 

足関節軸より前に力が作用しているため、足関節が背屈方向に動かされていますね。

これがめちゃ大事です。この背屈方向へのモーメントは、外部モーメントと言います。

外部モーメントの言う通りに体が動いてしまうと、こけます。

 

 

どういうことか?と思った方は、この場合をイメージしてください。立位で中足骨まで荷重をかけた姿勢がこの図と同じ状態です。

いかがですか?足関節底屈筋が勝手に収縮して、姿勢を保とうとしていると思います。

 

 

これは外部モーメントによって背屈方向に動かされた状態に対し、このままだと転倒するため、下腿三頭筋による足関節底屈を用いて、外部モーメントに拮抗しているということになります。

この時の下腿三頭筋による足関節底屈を、内部モーメントといいます。

 

つまりは、

➀姿勢が変動すると外部モーメントが決まる

②外部モーメントに対して、拮抗する方向の筋が収縮する(内部モーメント)

 

とまとめられますね。

 

ここまでが基礎です。これを理解すると、立位や歩行の動作分析がかなり理解しやすくなります(^-^)

 

それでは、少し臨床応用に入っていきましょう。

 

 

 

 

関節モーメント‐距離が長い場合の考え方

3と、次の図4を比較してみます。

これらを比較すると、図4の方が、関節軸から力の作用点までの距離が長い事が分かります。これをモーメントに置き換えて考えてみます。

 

例えば、図3での力は体重と重力です。これは図4でも同じ話です。

ですが、図4のほうが距離は長いため、モーメントの計算式に当て込むと、長さが長い分モーメントは図4が大きくなります。

 

となると、外部モーメントが大きい状態に拮抗しないと姿勢を保てないため、下腿三頭筋が図3よりも収縮強度を高める活動をしてくれます。これが内部モーメントでした。

つまり、関節軸から遠いところに力が作用されてしまうと、関節運動を起こそうとするモーメントは非常に大きくなる。というわけです。

 

 

というわけで、臨床応用の場合どうするかというと、荷重位置をコントロールします。

前脛骨筋の収縮強度を高めたいのであれば、足関節軸の後方へ荷重位置を移動させます。

体幹を大きく後屈すると膝関節軸の後方に力が作用するので、外部モーメントは膝関節を屈曲させようとします。なのでそれに対抗しようとして膝伸展筋が収縮(内部モーメント)します。

これによる筋疲労が臨床上みられます。なので、体幹の姿勢を修正するアプローチをして、力が作用する方向を変える事で膝への負担を軽減させます。

 

 

 

関節モーメント‐力の操作

先程までは、関節軸からの距離の話を中心にしてきました。

今度は、もう一方の【力】の臨床応用について考えていきます。

5をご覧ください。

胸郭を上に持ち上げる操作をすることで、体重を免荷しています。これにより、モーメントの計算式である力が弱まりますので、言い換えると内部モーメントも弱まります。

ある特定の筋の弱化がある場合は、まずはこの操作を用いて、その特定筋の負担を下げてみての訓練をするのもおススメです。

 

 

今度は図6

先程とは逆で、骨盤から下に力を加えています。これにより、モーメント計算式の力が増加しますので、内部モーメントも大きくなります。よって、荷重位置の調整も合わせる事で、特定の筋を強化することが可能となります。

 

以上より、モーメントを考えることは動作分析のレベルが格段に上がり、アプローチにまで応用が効いてきます。ぜひぜひ、活用してみてください(^-^)

おすすめの記事