関節負荷と筋張力 臨床にどう活かす?

今回は【筋張力と関節負荷の関係性】と題し、

臨床の動作分析にどう活かすか?

評価〜アプローチにどう紐づけるか?についてご紹介したいと思います。

 

一見、この両者と関節負荷の関係性と言われても、なかなかピンと来ない方も多いのでは無いでしょうか?

 

関節負荷と筋張力の用語自体は、専門家なら理解されていると思いますが、関係性は確かによく分かんないですよね。

 

ですが、実は密接に関係しあっているこの両者。疼痛や歩行異常の原因にもなり得ます。

 

それではいきましょう^_^

 

 

 

関節負荷のポイント

関節負荷とは、総称的な意味合いで用いられています。

関節への負荷は圧迫力、剪断力、回旋力、部位によっては内反外反なども含まれています。

 

また、関節負荷は、多くの場合【骨負荷】にも繋がってきます。

よく、変形性膝関節症の立ち上がりや歩行時の関節負荷は高いため、筋力トレーニングを、、、といった言葉をよく聞きますよね^_^

 

股関節負荷でいうと、臼蓋骨頭接触圧が関節負荷の指標とされています。この場合は圧迫力=負荷として捉えてください^_^

大腿骨頭と臼蓋間にセンサーを挿入し、各動作でどの程度圧がかかっているか?を研究したものです。(1)(2)

 

その結果は以下の通り

非荷重

背臥位股関節外転ー2.8

側臥位股関節外転ー5.6

下肢伸展挙上運動ー3

荷重

静止立位ー1.2

自由歩行ー5.6

立ち上がり(38cm)ー15

 

この関節負荷の報告で注目していただきたいのは、非荷重条件でも、荷重条件の動作よりも負荷が高いこともある

 

という点です。

例えば側臥位股関節外転は5.6で、これは静止立位より高く、自由歩行と同等です。

 

これは後述する筋張力の話にも大きく絡んできますので、押さえておいてください^_^

 

 

 

筋張力と関節負荷の関係

張力とは【糸や弦のような細長い物体に,その長さを伸ばす向きに加えた力】や、【引っ張り合う垂直応力】とも言われています。

 

ややこしいですが、今回は単に筋収縮時や筋伸張時のピンと張った状態が、筋張力と捉えていただいて問題ありません。

 

そして、先程の関節負荷の話に立ち戻りますと、非荷重でも関節負荷が高いことが分かりました。

 

これは、筋張力が関節を圧迫したためと考えられます。

 

具体的には、股関節外転運動時には、圧迫力だけでなく関節を回転する力も加わります。

これは剪断力に近い負荷です。

 

筋張力は関節負荷を増幅させる!

 

これだけ読むと、何だか筋力トレーニングも関節負荷を高めてしまい、ダメなんじゃないの?と思考が繋がりますよね。

たしかに一理ありますが、そこには関節の【安定ー不安定】という概念も絡んできます。

 

股関節深層筋(閉鎖筋など)だと、純粋な圧迫力が加わることで求心性を高めてくれます

これが関節安定化に繋がることで、必ずしも負荷=悪者とはならないケースもあります。

 

では、結局張力と関節負荷をどう考えたら良いのか?について最後に考察していきます。

 

 

 

筋張力バランスと関節負荷

本題はここです。

 

臨床疑問は

関節負荷を考慮した時に、筋張力を高めていいのか?良くないのか?

 

結論から言うと、

正常筋活動の範囲での張力=⚪︎】

【代償筋活動での張力=✖︎

 

と言えます。

 

中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋の出力を低下させた場合、股関節負荷は増大する。(3)と言われています。

 

さらに面白いことに、

股関節外転筋群の筋力低下を有する患者のモデル解析では、外転筋力を増加させたシュミレーションにより歩行時の股関節負荷は減少した(4)

と報告があります。

 

つまりは、

股関節外転筋弱化→大殿筋による代償→股関節伸展抑制のために大腿直筋の代償→膝周囲のトルク調整でハムストリングスの代償

 

この結果、

代償筋張力による関節負荷が、本来の外転筋による負荷以上にかかってしまう

という状態に陥ってしまいます。

 

 

もう一つ、臨床的に超重要ポイントをまとめます。

(4)のように、外転筋弱化を強化させると負荷が減弱したとの報告から推測するに、

 

関節負荷を軽減させる方法は、

代償出来る周囲筋の強化をするのではなく、弱化筋自体の強化そのものが、関節負荷軽減に繋がる。

と考えられます。

 

ぜひ、関節負荷を意識したアプローチをする際は、弱化筋の強化を試みてください^_^

 

 

参考文献

(1)W A Hodge et al:Contact pressures from an instrumented hip endoprosthesis. J Bone Joint Surg Am. 1989 Oct.

(2)S J Tackson et al:Acetabular pressures during hip arthritis exercises.Arthritis Care Res. 1997 Oct.

(3)Giordano Valente et al:Influence of weak hip abductor muscles on joint contact forces during normal walking: probabilistic modeling analysis.J Biomech. 2013.

(4)Casey A. Myers et al:Simulated hip abductor strengthening reduces peak joint contact forces in patients with total hip arthroplasty.Journal of Biomechanics,Volume 93, 27 August 2019, Pages 18-27.

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