
今回は【ノルディックウォーキングのメリット】と言うテーマで解説していきます。
皆さんは、歩行補助具を選定する上で、
・T字杖や4点杖、ロフストランド杖
・歩行器
・老人車
この辺りはさることながら、ノルディックを選定した経験はあるでしょうか?
おおよその施設に数本は常備されている印象があるノルディックですが、用途が認知されておらず、稀に訓練時のみ試してみる。。
程度に留まっている施設も少なくないと考えられます。
今回は、ノルディックの特徴をご紹介しつつ、臨床で有効に使用できるような内容になっております^_^
ノルディックウォーキングの効果
イメージとしては、
①歩行速度が上昇
②姿勢が良くなる{アップライトへ}
③有酸素運動として効率が良い
この辺りではないでしょうか?
では早速、その効果について確認していきます。
①歩行速度は上昇するのか?
対象は、
・杖なしで自立歩行可能
・神経疾患の既往なし
・腰、股、膝関節に痛み手術歴なし
・介護保険認定を受けていない
・口頭指示の理解良好
これらが含まれている65歳以上の高齢者28名。
通常歩行とノルディックウォーキング
(以下NW)を比較し、歩行速度、歩幅は変化はないが、歩隔はNWで有意に減少した(1)
このように、歩行速度に変化はない結果になりました。
ただ、この研究の対象者は歩行自立度が高い方ばかりです。骨折後や既に杖歩行レベルの方に当てはまるとは限りませんね。
②姿勢は良くなるのか?
先程と同じ研究です。
まずNWの推奨される長さですが、
・立位で肘関節屈曲90度より1〜2cm下げた高さで、床に垂直についた時の長さ。
とされており、
歩行の仕方は
・前方に突くポールは床に垂直にし、前足と同じ位置に
・ポールは床に軽く置くように突く
・反対側のポールは後ろ足の横に添える
・肩の力は抜き、グリップは軽く握る
このような指導をされています。
これを前提に。
通常歩行とNWを比較し、歩行中の体幹屈曲角度に変化があるか?
その結果、
・LR〜Mstにおける体幹屈曲角度はNWで有意に増加。
・体幹側屈角度の振幅はNWで有意に減少
・COG左右振幅はNWで有意に減少
このようになりました。
姿勢の良さが何を示すかは勿論一概に言えませんが、歩行中の体幹屈曲角度増加となると、姿勢が良いとは言い難いですね。
つまり、イメージとして多い姿勢が良くなる=体幹伸展位の状態とは真逆の結果となりました。
ただ、側屈の減少や重心移動量の減少があることから、左右方向への安定性は上昇しているかもしれません。
※前述したように、歩隔が減少していることが影響していると考えられます。
また、被験者の感想として「姿勢が良くなる」と多く聞かれたことからも、主観としての良姿勢は獲得出来ているのかもしれません^_^
③有酸素運動として効率が良い?
通常歩行と比較すると、両手を振るだけではなくポールを突いているため、効率が高いように思います。
通常歩行と比較しエネルギー消費量が20%増加する(2)
健康人におけるノルディックウォーキングは、同じ速度のウォーキングに比べて心拍数や酸素摂取量、エネルギー消費量が有意に上昇し、これはポールを使用することで上肢の筋活動が増大するためと考えられている(3)
ここまでで、既にNWは有酸素運動として効果的だと分かります。
さらに面白い報告があります。
肥満患者におけるNWは、同速度のウォーキング に比べて心拍数と酸素摂取量、エネルギー消費量が上昇するにもかかわらず、自覚的運動強度(RPE)は有意に低下する。(4)
つまりは、自覚的に疲労感を感じにくく、かつ有酸素運動としての効果を期待できるということです。
疲労度を小さくしながら有酸素運動の効果を出せるというのは、臨床的に見てもかなり嬉しい報告ですね^_^
まとめ
NWによるメリットは、歩隔が減少し左右へのふらつきは減少。また有酸素運動としての訓練は効果的。
意外な結果としては、体幹屈曲角度が増加していること、歩行速度に影響がないことでした。
しかし、前述した通り、今回ご紹介した対象者は、高齢者といえど独歩自立の方ばかりです。
骨折後や元より杖歩行レベル以下の高齢者にそのまま当てはめることは検討が必要です^_^
とかく、左右ふらつきが多い方、有酸素運動を取り入れたい方に関してはおおよそプログラムに組み込んで問題ないと考えられます。
参考文献
(1)本宮 丈嗣 他:ノルディック・ウォーキングが高齢者の歩行に与える影響.理学療法学.2016 年 44巻1号p.11-18.
(2) J P Porcari et al.The physiological responses to walking with and without Power Poles on treadmill exercise.Res Q Exerc Sport. 1997 Jun.
(3)Jordan AN, Olson TP, Earnest CP, et al.: Metabolic cost of high intensity poling while Nordic walking versus normal walking. Med Sci Sports Exerc, 2001, 33: S86.
(4)Figard-Fabre H, Fabre N, Leonardi A, et al.: Physiological and perceptual responses to Nordic walking in obese middle- aged women in comparison with the normal walk. Eur J Appl Physiol, 2010, 108: 1141-1151.