今回は、骨癒合の基礎知識や臨床応用についての内容となります。
骨癒合というと、骨折後に骨が治癒した状態を指しますね。
どういったメカニズムで骨が治癒するのか、また臨床ではそのメカニズムをどう活かしていくか?を紐解いていきます(^-^)
骨癒合の過程(1)~(5)
・骨癒合するまでには、一次骨癒合と二次骨癒合の2つの過程が存在します。
一次骨癒合
・外科的処置により骨折部位が整復され、骨折端同士を圧迫固定した場合に仮骨をほとんど形成せず癒合する過程。
※X線上でも仮骨の所見は認められません。
二次骨癒合
・骨折部位に仮骨が形成され、炎症期・修復期・改変期の3過程を経て修復される過程。
・それぞれの過程は独立しておらず、重複している時期も存在しています。
炎症期 骨折直後から仮骨が形成されるまでの期間「受傷後約1~2週間」
・骨折により血管が損傷され、骨折部位に血腫が形成される。
・血小板により血腫が凝血塊となり、炎症細胞や破骨細胞が老廃物や骨片を貪食する。
・線維芽細胞が凝血塊に浸潤し、肉芽組織となる。
修復期 膜性骨化と内軟骨性骨化の両過程により仮骨が形成される期間「数週から数ヶ月」
・初期に形成された軟性仮骨(soft callus)は、皮質骨が不十分な線維性骨(woven bone)である。
・軟性仮骨内に軟骨芽細胞や骨芽細胞が増殖し、6~8週間後に硬性仮骨(hard callus)となる。
改変期 仮骨が層板骨に置換されるまでの期間「数ヶ月から数年」
・骨芽細胞での骨形成と破骨細胞での骨吸収が繰り返され、皮質骨と骨髄腔が形成される。
・余分な仮骨は吸収され、仮骨量は徐々に減少し、骨癒合が完成となる。
この過程で癒合するわけですが、何だか難しく感じちゃいますね。...
臨床ポイント‐修復期の荷重は?
修復期の軟性仮骨は荷重に脆弱です。硬性仮骨になると徐々に力学的安定性が回復していきます。
つまりは、硬性仮骨が出来る6~8週までの軟性仮骨期に過度な荷重は注意が必要です。
いくら全荷重許可が医師から指示があろうとも、階段昇降や独歩練習をする時は疼痛に注意が必要ですね。
臨床ポイント‐改変期の荷重は?
改変期の仮骨は骨吸収と骨形成を繰り返す必要があります。かの有名なWolfの法則(荷重は骨折部の凸側に骨吸収、凹側に骨形成が生じる)に従って、荷重をしていく必要があるのです。
一見骨折が治癒してADLが改善した方の場合でも、骨癒合過程は終了していません。適度な荷重運動を心がけていただくことがポイントです。
実際の荷重方法は?
荷重方向をいかに意識するかがポイントです。
この図をご覧ください。
この黄色い物体を骨に見立て、矢印の方向が荷重方向と捉えてみると、適度な軸圧迫は骨癒合を促進しますが、それ以外の方向はむしろ骨癒合を阻害します。
最もお伝えしたいポイントは、軸圧迫荷重が過度であったり、回旋が加わると骨癒合が阻害される点です。
この荷重では、荷重下で体幹を左に回旋させていますね。よって、軸圧荷重とはならず回旋ストレスも加わっています。これだと、骨癒合を阻害します。
次にこの荷重。
これだと軸圧荷重が加わっていますので、骨癒合は阻害しません。
ただ、骨の状態に見合った軸圧荷重の負荷量である必要があります。
例えば軟性仮骨の状態や骨膜性疼痛がある状態だと、平行棒による免荷を上手く利用する必要がありますね。骨の状態や疼痛に応じて、平行棒をpushして下肢への荷重量をコントロールしましょう。
まとめ
今回はここまでとします。
骨癒合を促すためには、
- 仮骨の形成度合いに応じて荷重量をコントロール
- 回旋ストレスを加えず適度な軸圧荷重を心がける
これらを意識した荷重練習を推奨します(^-^)
文献
1)金村尚彦:骨折の治癒過程を知る.斉藤秀之,加藤浩(編):臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス 極める大腿骨骨折の理学療法 医師と理学療法士の協働による術式別アプローチ,pp10-15,文光堂,2018
2)松原貴子,城由起子:骨折.沖田実,松原貴子,森岡周(編):機能障害科学入門, pp120-121,神陵文庫,2012
3)吉川秀樹:骨の修復と再生.松野丈夫,中村利孝(総編):標準整形外科学.第12版,pp44-47,医学書院,2014
4)小柳磨毅:運動器系.吉尾雅春(編):標準理学療法学 運動療法学総論.第3版,pp138-143,医学書院,2012
5)神先秀人,赤塚清矢:骨の構造と機能.市橋則明(編):運動療法学 障害別アプローチの理論と実際.第2版,pp49-51,文光堂,2015