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お待たせ致しました。回答させて頂きます^^
①肩関節のモビライゼーションが滑膜炎の評価になるのか?
結論から申し上げますと「モビライゼーションでは明確に滑膜炎を見抜くことは困難」だと考えています。
と言いますのも、いくら緩みの肢位で実施しているモビライゼーションと言えど、骨のみを限定してコントロールできているわけではなく、少なからず軟部組織の動きも伴います。この際に、仮に関節外の炎症や筋スパズムが生じていた場合、関節内の痛みなのか、関節外の痛みなのかを鑑別することは極めて困難かと思います。
そして肩関節における関節モビライゼーションでの痛みですが、個人的には経験があります。大前提として炎症期には関節モビライゼーションは禁忌かと思いますので、安静時痛が生じていたり、疼痛レベルが強い場合には行ったことはありません。ただ炎症→拘縮期の移行期だと想定される時期にモビライゼーションを行った結果、その際に痛みを訴えられ、モビライゼーションを中断したことがあります。あくまで経験則ですので、参考までにされて下さい。
②肩関節における滑膜炎のメカニズムについて
肩関節でも膝のように軟骨の摩耗によって滑膜炎を引き起こすことはあるかと思います。実際に変形性肩関節症に移行する場合も多いですね。ただ膝や股関節に対して、肩は荷重関節ではないため、比率としては少なく、痛みの程度も低いかと思います。ただこれが関節包外へ波及すると、自由神経終末が多いと言われている肩峰下滑液包や腱板疎部にて強い痛みが表出されると考えています。③へ続く。
③炎症の波及メカニズムについて
これはめちゃめちゃ良い質問ですね。私もこれといった答えを持ち合わせていなかったため、少し調べてみました。
「増殖した滑膜組織が肩関節の内側から小孔を通って押し出され、肩峰下・三角筋下・烏口突起下に広がる」
信原克哉.肩ーその機能と臨床 第4版,医学書院,p156,2012.
本書にはこのようなことが書かれており、滑膜の増殖が起因して起こるようです。他にここを言及したものが現状見つけられておりません。様々なところで関節内→外へ炎症が波及するという文言は目にしますが、”どのように”という部分が記されたものは少ないですね。明確なメカニズムが明らかになっていないという現れかもしれません。
今後も様々な論文を渉猟してみますが、現状のお答えとして上記を提示させていただきます!