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#6144
池田拓未
キーマスター

山中さん。お世話になっております!

①当たり前の話で恐縮なんですが、術後の拘縮は時間がたつと、より可動域の改善はしずらくなりますでしょうか?
▷術後の拘縮というのは、固定期間に生じる一次性拘縮からさらに烏口上腕靭帯や関節包に新生血管が形成され、線維芽細胞が増殖するという二次性拘縮も絡んでくるため、経過期間が長いほど拘縮が強い可能性が考えれるため、可動域は改善しづらくなります。

術後3ヶ月以内が一番改善するというのは、そもそも何による拘縮なのかによりますが、術後固定が取れてからのこの期間はリハの強度も高められるため、改善度が高くなるかとは思います。



②リハビリの頻度について
▷この回答は本当に難しいところなのですが、個人的に「リハ頻度の増加=可動域向上」は結びつかないと考えています。

「軟部組織の伸張性」のみにフォーカスをあてると、リハ頻度が増えることで質の高い介入がその都度行えるため、効果的だと思います。ただその裏で「なんでこんなに病院にきているのだろうか」「リハに時間を費やしていて、仕事が遅れたり、余暇が楽しめない」といった心理社会的な問題が生じてしまいます。ですので、意欲的にリハに参加してくださる方であれば、介入頻度を増やすのは最善の策かと思いますが、破局的思考が強い人などはあまりオススメしません。仮に効果がでなければ、さらに破局的思考が強くなってしまう可能性もありますので…

以前、上腕骨近位端骨折後の報告ではないですが、介入頻度と可動域の改善度にそれほど効果がなかったというものを見たことがあります(どこからの情報かを明確に覚えていないので、聞き流して頂いても大丈夫です)。

とかく、本人のキャラクターなどから慎重に判断したほうが良さそうです。



リハビリの進行具合について
▷術前の状態や術後リハの不十分さを考えるとこれまたなんとも言えないところではあります。

❑上腕骨近位端骨折後(6〜64ヶ月:平均15ヶ月)の平均屈曲角度116度、外旋29度¹⁾

こういった報告もあり、ここだけを見てしまうと遅れているということができるかもしれません。他にも色んな要素が絡んでいるので、この数値だけに引っ張られすぎるのもよくはありませんが…

ただ以前お話しておりましたように、本当に棘上筋前部線維の滑走不全なのであれば、これだけの介入期間での改善度としては少ないように感じています。やはり関節包靱帯の拘縮やまだまだ探せていない制限因子も少なからずあるのかなというのが、これまでのやり取りの中で思うことではあります。

エコーなどによってそのあたりを精査できれば、今後どれぐらいの改善が可能か?今のリハが正しいのか?という部分も確認ができ、ご本人さんとの再度ゴールの共有ができるかと思いますので、やはり再評価をオススメいたします。


1)親富祖徹, et al. Locking Plate 固定 (PHILOSTM) を行った上腕骨近位端骨折の治療成績. 整形外科と災害外科 69.2 (2020): 344-348.