
今回のシェアリングアンサーは、【圧迫骨折後の椎体内クレフト】についてまとめます。
リハビリの対象として、高齢者は言わずもがな多いですよね。となると、骨粗鬆症性骨折に対する知識は重要です。
中でも、椎体圧迫骨折に関わるセラピストは多いのでないでしょうか。
圧迫骨折の臨床疑問として、
・なぜ疼痛が残るのか
・保存治療の上で、何に注意すべきか
という点はよく挙がりますよね。
筋筋膜性疼痛の可能性ももちろん高いですが、それ以外の、【椎体異常】が原因の疼痛もあります。
それを考えていく上では【椎体内クレフト】が重要になってきます。
それでは、内容に入っていきましょう。
椎体内クレフトとは?
クレフトとは、【cleft-裂けた・割れた】の意味です。
つまり、「椎体内が避けた状態」と直訳出来ます。
圧迫骨折が発生すると、椎体内に亀裂が見られることがあります。
となると、椎体が陰圧になってガス貯留を認めることがあります。
この、椎体内にガスが溜まった状態が【椎体内クレフト】と呼ばれています。
所見の確認は、CTを見ると一目瞭然で、ガスが貯留するため椎体が黒く映ります。
実際のCT画像は、以下リンク先をご参照ください。↓
http://iryoukankeisikaku.com/blog-entry-2786.html?sp
椎体内クレフトの発生原因
ここまでで、椎体内クレフトとは何か?はご理解いただけたかと思います。
圧迫骨折後に見られる椎体内のガス。でした。
では次に、そのクレフトをどう解釈するか?についてまとめていきます。
まずは圧迫骨折の中でも、どのような経過を辿った症例に見られやすい所見かについて。
26椎体を対象とし、骨粗鬆症性椎体骨折のクラフトの原因及び経過を明らかにした研究。
約70%が初診時新鮮骨折として認識されておらず、その結果安静や外固定等の適切な初期治療を受けていた例は少なかった(1)
とあります。つまり、圧迫骨折の初期対応に重要な骨折椎体の固定をしていないと、クラフトを発生させる可能性が高い。と考えられます。
椎体内クレフトの臨床的意義
では、椎体内クレフトがある場合、どのような状態と言えるでしょうか?
椎体=もちろん骨なので、緻密骨+海綿骨で基本は構成されています。
にも関わらず、クラフトの病態はガス貯留であるため、いわば【椎体内がグラグラ=不安定】と考えられます。
骨内にガスが溜まっているため、イメージは尽きやすいですね^ ^
こうなると、体幹の前屈時は椎体が潰れ、後屈時は逆に離開してしまいます。
これは、前屈ー後屈の動態撮影をすると明らかです。
このことから、体幹を後屈をするとカパカパと椎体がワニの口のように空いてしまいます。
【アリゲーターサイン】と言われることもあります。
こうなると、もちろん骨癒合の阻害因子になりますよね。骨が離れてしまうので。
よって、椎体内のクレフトがある場合は、前屈だけでなく、後屈にも注意が必要。ということになります。
田中らは、椎体内クレフトは保存的治療の失敗の画像的証拠とも考えることができる(2)
と述べており、いかに椎体内クレフトを発生させないか?が骨癒合の促進、偽関節の予防=疼痛の予防に繋がると考えられます。
ぜひ、CTを見ることができる方は確認してみてください^ ^
参考文献
(1)平野徹:椎体内vacuum cleftを認めた骨粗鬆症性椎体骨折の検討臨床雑誌整形外科.53巻10号2002.
(2)田中法瑞:骨粗鬆症性椎体圧迫骨折と経皮的椎体形成術の適応.椎体内クレフトの意義.脳外誌,18巻2号,2009.