体幹前傾位のすり足 アプローチ戦略とは?

今回は【体幹前傾位でのすり足の原因とアプローチ】について解説していきます。

 

臨床で高齢者と関わる療法士は多いと思いますが、体幹前傾位となるとすり足になりやすいですよね。

 

老人車歩行で前屈みになっていたり、

強い円背で前屈みになっていたり

 

こういった場合、なぜ体幹前傾位になるとすり足になりやすいか?を理解しておかないと、改善の糸口を見つけられません。

 

それでは、バイオメカニクスの視点を中心に、体幹前傾位によるすり足の原因〜アプローチについてまとめていきます^_^

 

 

 

すり足とは

まずは、すり足そのものについて改めて考えます。

すり足とは、トゥクリアランス(足尖と床面との距離)が狭小化し、床面に接するまで至ったものを指します。

 

歩行周期で表すと、

立脚初期の時点でヒールコンタクトとならず、

フラットフット(足底接地)となったりフォアフット(前足部接地)となったりします。

 

こうなりますと、もう正常歩行特有のdouble knee actionやその他衝撃吸収機構は機能せず、

すり足が連続してしまうような歩行パターンへと繋がってしまいます。

 

 

正常歩行のトゥクリアランス

それでは、正常歩行だとこのトゥクリアランスがなぜ保たれているのでしょうか。

 

結論から申し上げますと、

下肢の二重振り子運動】によって保たれています。

 

前脛骨筋活動もありますが、微々たるものです。

 

二重振り子運動を簡単に説明しますと、

勝手に大腿部→少し遅れて下腿部と移動する現象】です。まるで振り子のような動きをします。慣性を使っているイメージです^_^

これにより、自然と膝関節が屈曲することで、トゥクリアランスが形成されるというわけです。

 

では、体幹前傾の方ではこの【勝手に移動】が見られにくいです。振り子運動が、見られにくいです。

 

それを理解するために、もう少し二重振り子運動を専門的に解説していきます。

 

まず、最も重要なのは【立脚終期】です。

この時に、股関節が伸展され、股関節屈筋が伸張される必要があります。

勘違いしてはいけないのが、股関節伸展角度だけが欲しいわけではなく、そこに屈筋の伸張が合わさる必要があります。

 

なぜなら、これが弾性エネルギーとして活用されます。

 

引き伸ばされた屈筋が、抜重になる時に解放され、前述した振り子運動が実現されます。

よって、膝が軽度屈曲位での遊脚期を構築しているのです。

 

背屈筋が頑張って収縮して、すり足を止めているわけではないことと理解出来ましでしょうか^_^

 

 

体幹前傾位でのトゥクリアランス

では、本題に戻ります。

振り子運動を構築することが、クリアランス確保・すり足予防となるわけですが、

体幹前傾位でも振り子運動は見られるでしょうか?

 

そもそも振り子運動のために重要なのは、

股関節伸展角度+股関節屈筋伸張】でした。

 

体幹前傾位となると、まず股関節伸展角度はかなり減少します。

 

となると、股関節屈筋が引き伸ばされにくく、弾性エネルギーが蓄積されていない状態で、遊脚期に移行してしまいます。

 

よって、二重振り子は不十分となり、トゥクリアランスが不足ーすり足へと繋がります。

 

 

 

アプローチ①ー体幹姿勢

まず第一に、前脛骨筋などの背屈筋に明らかな弱化があれば、その強化は必要です。

MMTが3以上あるならば、【二重振り子の構築】を目指します。

 

この方法は、単純に股関節伸展可動域を作るわけではありません、

体幹を直立位に近い状態にすることが第一にポイントです。

 

ただ、脊椎の変形によるものであれば、体幹を直立位にすることは困難ですよね。

その場合は、蹴り出し力を高め、クリアランスを高めるアプローチが効果的です。

 

 

アプローチ②ー蹴り出し

もし、蹴り出しが弱いとどうなるか?

立脚終期から遊脚期に移行する時に、抜重が不十分になってしまいます。

 

抜重をするには、足底屈筋の筋力で押し出していると理解してください^_^

 

よって、トゥクリアランスだけでなくフットクリアランスまで低下します。

 

フットクリアランスとは、トゥではなくフットなので、足底を床面に擦ってしまうすり足歩行です。

 

蹴り出し力の強化の例としては、立脚終期の姿勢で正面に壁を置き、蹴り出し運動を反復する運動ですね^_^

 

このように、トゥ、フットを意識したアプローチとなると、

①体幹直立位の構築

②蹴り出し運動

 

この二つを意識してみてください^_^

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