
今回は【股関節疾患とQOL】と題しまして、解説していきます。
QOLと聞くと、生活の質ー満足度であり、理学療法士も寄与する必要があると学んできたと思います。
とは言っても
どのように考えていくべきか?評価は何か?
などの疑問が山積みになりやすいですよね。
そこで今回はQOLの考え方と股関節疾患でおすすめの評価法について、ご紹介していきます^_^
QOLとは?
WHOでは「個人が生活する文化や価値観のなかで、 目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の 人生の状況に対する認識」と提唱されております。
何だか難しいですよね。
医療職がQOLと聞くと満足感や幸福感、そのまま生活の質と考えませんか?
もちろんそれも正解です。
しかしながら、言葉の意味を大きく感じるためか、QOLと聞いてもボヤッとした認識になりがちです。
結論から言うと、QOLを一言で定義づけることは現状されていません。
ただ重要な点は共通しており、QOLは人々の主観的な認識により成り立っています。
「心理量」とも言われてますね。
高橋らは、自然科学は一般に客観性(第三者評価)を重視していますが、QOLの正確な把握には主観的な心理量をいかに信頼性が高くかつ的確に把握するかが重要(1)
と述べています。
これかなり面白いと個人的に思ってまして。
医療は客観性。しかしQOLは主観性。
もし客観性重視で考えすぎると、それはQOLの観点から見ると評価が正確に出来ていない可能性もあります。
健康関連QOL
健康関連 QOL(HRQOL)という概念があります。
1990年代の後半に提唱されておりますがご存じでしょうか?
健康関連QOLの定義は以下の通り↓
「疾患や治療が患者の主観的健康感(メンタルへルス、活力、痛みなど)や、毎日行っている仕事や家事、社会活動にどのようなインパクトを与えているか。これを定量化したもの」
健康関連QOL評価法は、一般的健康状態を包括的に評価する「包括的尺度」と特定疾患やそれに伴う特定症状の程度を評価するための「疾患・症状特異的尺度」に大きく分類されます。
包括的尺度の代表例は【SF-36】がよく浸透しております。
その名の通り、36の質問に答えてもらいます。
具体的な内訳は以下↓
身体機能:10質問
日常役割機能:4
体の痛み:2
全体的健康感:5
活力:5
社会生活機能:2
日常役割機能(精神):3
心の健康:5
全てが質問紙による評価なので、主観的にどう感じているか?次第で結果は大きく変わります。
股関節のQOL評価
次に、疾患特異的なQOL評価について。
今回はJHEQをご紹介します。
読み方はジェイヘック。
こちらも当然質問紙なわけですが、記入時に注意点があります。
本質問票は患者主体の評価質問であり、質問票記入は患者本人もしくは患者本人と付添人において行う。医療従事者が回答を補佐することは回答を誘導する可能性があるため望ましくない。
この注意事項からも、いかに先ほどお伝えしたQOLの心理量、主体性を意識しているかが読み取れますね^_^
質問は20項目ありますか、股関節の状態 (Visual Analogue Scale 方式) および痛み、 動作、メンタルの因子から構成されております。
メンタル面のみ抜粋しますと、
○股関節の病気のためにイライラしたり、神経質になることがある
○股関節の病気のために、気分がふさいで外出を控えるようになった
○股関節の病気のために、生活に不安を感じることがある
○股関節の病気のために、健康に不満がある
○自分の健康状態に股関節は深く関与していると感じる
○股関節の病気のためにいろいろなことに意欲的に取り組むことが困難である
○股関節の病気のために地域の行事や 近所づきあいがうまくいかないことがある
このように、股関節が問題となりメンタル面に悪影響があるか?を評価指標にしています。
まとめ
JHEQやSF-36然り、QOLとは【心理量と主体性】を評価することに重きを置いていることに着目が必要です^_^
また、臨床でも客観的指標では明らかに良くはなっているが、もしかするとQOLの視点(主観)で見ると 改善していない可能性もあります。
この考えに気づくことで、療法士→患者の視点だとゴール達成。患者→療法士の視点だとゴールが未達成だなあ。と感じているかもしれません。
ぜひ、皆さんの評価の中にQOLの視点を持ち合わせていただけると幸いです^_^
参考文献
(1)高橋秀寿:Quality of life.Jpn J Rehabil Med 2020;57:1174-1180.