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#1244
眞本匠
キーマスター

回答させていただきます。
MMTだと、下腿三頭筋であればMMT3+が必要であると記載されています。(1)

やはり指標として多いのは、ハンドヘルドダイナモメーター(HDD)での報告ですね。

測定方法にばらつきはあるものの、基本的には以下の通りです。↓
HDDにて、膝関節屈曲、股関節屈曲90°座位にて下腿を懸垂した状態で実施した。被検者には約5秒間の最大努力による求心性収縮を行わせ、30秒以上の間隔を空けて実施した。3回測定し平均値を採用した。得た値を下腿長(m)で乗じ体重(kg)で除した値を補正値(Nm/kg)とする。このNm/kg(トルクを体重で除した値)での報告が多いので、ご紹介します。

歩行自立には、院内という限られた環境下で一般に0.6Nm/kg程度の筋力が必要(2)

0.53 ±0.2Nm/kgでも屋外歩行自立レベルに達し全例自宅退院となった(3)

運動器疾患がない高齢者の杖無し歩行自立には膝伸展筋力が0.8Nm/kgを上回る必要がある。(4)

起居・移動動作の自立に必要な筋力を検討したところ、足背屈筋群は0.42(Nm/kg)、膝伸展筋群は 1.43 (Nm /kg)が目安であった。(5)
※この(5)は単純な歩行に必要な指標ではやく、移動、階段、ベッド椅子車椅子への移乗、トイレへの移乗、浴槽シャワー使用場所への移乗の5項目が自立になる指標です。

運動器疾患のない高齢患者では、膝伸展ピークトルク体重比が0.6Nm/kgを下回った場合, 院内独歩自立者は2割未満となる。
一方、0.9N.m/kg以上ではほぼ全者で院内独歩が自立する。(6)

ここまでを専門的な知識として持っておきながら、患者さんへの説明としては、
初めのMMT3+の話と、立ち上がりと歩行の関係で説明すると良いかと思います。↓

40cm台から立ち上がりが不可能な者は1.0m/sec以上の速度での歩行が困難な可能性が高い。20cm台から立ち上がり可能な者は1.0m/sec以上の歩行速度を有する可能性が高い。歩行速度は10m歩行にて測定。(7)

これだと簡単に評価出来、なんなら自主練習にも繋がるのでおススメです^ ^

【文献】

(1)Gotz-Neumann K:観察による歩行分析.月城慶一,山本澄 子,盆子原秀三(訳),医学書院,東京,2005.

(2)山﨑裕司:下肢筋力と歩行訓練 総合リハ32巻9号・ 813~818

(3)萩原 礼紀:高齢者における歩行に必要な下肢筋力の検討 日大生産工(院)

(4)山﨑裕司.早期理学療法―筋力低下へのアプローチ.34巻9号, 2000年9月 ,pp.603-609.

(5)浅川康吉. 高齢者における下肢筋力と起居・移動動作能力の関連性. 理学療法学 第 24巻第 4号 248〜253頁 (1997年)

(6)青木詩子他:慢性期片麻痺患者の非麻痺側膝伸展筋力と歩行能力の関連.総合リハ29: 65一70.2001.

(7)大森圭貢.運動器疾患のない高齢男性患者における立ち上がり動作能力と歩行速度の関連. 総合リハビリテーション.38巻10号 (2010年10月).