返信先: 肩の痛みと福祉用具との関連について

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#1501
眞本匠
キーマスター

回答させていただきます。

考えられる要因は、多く分けて2つあると考えられます。

➀特定方向への運動の起こりやすさ(DSM)による関節痛
これはMSIアプローチで提唱されている概念なので、詳細に興味がありましたら成書を見ていただきたいのですが、
簡単に言うと、一定の運動方向にのみ過剰な可動性を有している。ということです。

例えば、常に歩行器を使っている事で肩関節挙上の方向に関節運動が強制される機会が多くなります。これにより筋バランスや関節包靭帯のバランスが破綻し、関節窩に対して骨頭の位置が少しずれ、関節痛を起こしている可能性があります。
これが原因であれば、例えば肩関節の各運動方向のROMと筋力評価をし、特に弱化している筋があれば強化し、制限される運動方向があればROM運動で拡大を図ります。このような、関節中心のずれを是正する目的のアプローチも有用と考えられます。

既に所持されていれば、無視してください。そしてMSIの回し者でもなんでもございません。笑 MSIアプローチ成書↓

➁過剰収縮による疼痛物質放出の要因
まず第一に、筋血管が圧迫され血管が閉塞してしまうと、発痛物質であるブラジキニンが産生されます。またそこから、ブラジキニン作用を増強させるプロスタグランジンも産生されてしまいます。※ブラジキニンはかなり発痛が強い物質と言われています。

30%MVC以下だと血管は閉塞し、40%以上だと血流が制限されるとの報告(1)があります。
そのため、杖や押し車といった歩行補助具を使用しており、かつ30%をゆうに超えるMVCが発生しているとすれば、血流閉塞→ブラジキニン放出→疼痛と繋がると考えられます。

生活指導としては、持ち手の位置を微妙に変えたり、休憩を頻回にいれたりといったように、上肢筋群への持続的な収縮を避ける助言をすることをおススメします。何なら、前腕支持型歩行器(既に導入済みであれば無視してください)に変えたりするといった、上肢の等尺性収縮の需要を減らせる補助具にするのもアリかと思います。

アプローチとしては、上肢筋群の筋力を高め30%MVC以下で補助具を使える様に筋力増強をするといいですが、下肢筋力増強も行い、上肢への負担を下げることも必要になると考えられます。

【個人的臨床の共有】
歩行補助具による上肢痛って多いですよね。私の臨床では上記の発想をもとにしているのですが、【歩行補助具の正しい力の入れ方】
が出来ていない方もおられます。例えばT字杖であれば、軽く突くだけでいいのに関わらず必要以上に強く突いたり、杖で支持しその後宙に浮かしている時すらも常時力を入れている方もいます。脱力の学習もおすすめです。

(1)Humphreys PW, Lind AR: The blood flow through active and inactive muscle of the forearm during sustained hand-grip contractions. J Physiol, 1963, 166: 120-135