ホーム › Question&Answer › 質問コーナー › 動き出しについて › 返信先: 動き出しについて

回答させていただきます。
先に要点を述べますと、
「不動状態(それに近い状態含め)が続くと↓
①筋膜の性質により筋が硬くなる。
②滑液が関節腔全体に行き渡らなくなる。
まずはこの二つの問題がまずのしかかります。
①筋膜にはチキソトロピーという性質があります、
これはペンキを想像すると分かりやすいです。バケツに入れたペンキは動かさないと固まりますが、かき混ぜると柔らかくなります。
壁に塗った時も同様で、塗る時は広がりますが放っておくと固まります。
これをチキソトロピーといいます。
筋膜にもこの性質があると言われており、
寝起きや同一姿勢後はチキソ性により硬度が上昇しています。これは関節運動や筋出力発揮を低下させる要因と考えられます。
筋膜系の手技でもよく取り上げられる用語ですね。
②これを理解するにはたくみさんの動画を見ていただくのが良いと思いますが、滑液はご存知の通り関節運動の円滑性に関わります。
圧迫や関節運動で関節腔に充満するので、不動状態は逆に滑液低下を惹起します。
しかし、starting painなどの疼痛が無いのであれば、今回に限っては、この要因は大きくはないかもしれません。
①②ともに重要な要因でしたが、どちらも(不動)が問題なため、簡単な準備運動をしてから動き出すと、改善することが臨床上よく経験します。
では次に、最も大きな要因として考えられるのは何か?
今回は【活動後増強】の考え方をご紹介します。
「活動後増強とは、筋の発揮能力は,事前に強い筋収縮を行った後に一時的に増強する」
という理論です。
この機序としては運動単位の増加や同期化といった、運動単位を引き合いに出すことが多いです。
他には、筋収縮の刺激が筋に加わると、カルシウムイオン(Ca²⁺)濃度の増加が生じます。これでアクチン-ミオシンの感受性が亢進されるため。というのも一つの機序です。
何にせよ、運動後は出力が上昇します。
※ここに筋疲労の話が出てくると、とんでも無く厄介なことになります。とかく筋疲労が出ない程度に収縮をさせた後に運動させると、即時的に出力は上昇します^ ^
なので①②と同様に、準備運動をすることが、運動単位やアクチンミオシンの感受性を踏まえても、良いということですね。
裏を返すと、不動状態だと運動単位の同期化や発射頻度は少ない状態だと考えられます。
本症例でも、この要因があるかもしません。
補足①
【筋の反応性】という考え方もあります。
筋が適切なタイミングで必要な筋力を発揮出来る能力があるか?を示しています。
これは、MMTといったトルクを見るだけの検査では到底分からない部分です。
不動や不使用の結果として起こるともされています。
筋紡錘や腱紡錘といった感覚器に刺激が入っていない状態が続くと神経ー筋メカニズムも作動しにくくなるため、例えMMTが問題なくとも反応性が低下します。
補足②
【筋の余力】という考え方もあります。
これは、例えば1kgの重錘を「100キロを軽く持つことが出来るAさん」が持ち上げると、とにかく楽に持ち上げますね。
ですが、「5キロをなんとか持ち上げるとが出来る Bさん」が持ち上げると、少し努力度が大きいことは容易に考えられます。
これを歩行に当てはめても同じ話ですね。
つまり動作を遂行出来るだけの筋力があったとしても、その動作に対して必要な筋力がギリギリなのか、余裕なのか?は非常に重要な要素です。
臨床では、動作に必要な筋力があったとしても、更に向上させることは【筋の余力】の考え方を参考にすると、必要なことかもしれません。