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#1983
眞本匠
キーマスター

回答させていただきます。
MMTと、等尺性筋力による客観的数値を示しつつ解説していきます。

【MMTについて】
MMTは簡便ではありますが、歩行に必要なグレードは明記されていないと思います。
※参考書レベルでは、MMT3+あれば歩行可能で、下腿三頭筋が最も筋力が必要と記載されてはいます。

その理由としては、
①4〜5の範囲はやはり主観に委ねられる
②3.4.5の範囲が広すぎる順序尺度である
③体重で除することが出来ない
これらが挙げられます。

そのため、MMTで歩行安定性を評価するのは中々個人差が大きくなると考えられます。

では次です^ ^↓

【等尺性筋力値】
以下はHand held dynamometer (HHD)を用いた評価です。
まずは、HHDの測定値を体重で除した数値(Nm/kg)と、歩行のカットオフを見ていきましょう^ ^

【起居移動動作自立には?】
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/24/4/24_KJ00001307949/_pdf/-char/ja
足背屈筋 0.42Nm/kg
膝伸展筋 1.43Nm/kg

【階段昇段には?】
膝伸展筋1.0 Nm/kgを超えると90%以上、1.2 Nm/kg以上で全例が自立

【院内独歩自立には?】
膝伸展筋力が0.5Nm/kgを下回る場合、院内歩行自立群は減少し始める。その下限値は0.28Nm/kg。
0.30Nm/kgを下回る場合、室内歩行の自立割合は減少し始める。その下限値は0.13 Nm/kg。
伸展筋力が0.3Nm/kg以上の症例では院内独歩自立の割合は85.7%。
0.43 Nm/kgを超える場合すべての症例で院内独歩が自立。

【正常歩行に必要な筋力】
0.4Nm/kg以上

黄川照雄,山本利春,佐々木敦之・他:機能的筋力測定・評 価法-体重支持指標(WBI)の有効性と評価の実際.整形外 科スポーツ医学会誌,1991,10:463-468

【健常70歳代,80歳代における等尺性膝伸展筋力の平均値】
男性は0.56Nm/kg.0.49 Nm/kg。
女性は0.46Nm/kg.0.39 Nm/kg。

平澤有里,長谷川輝美,松下和彦・他:健常者の等尺性膝伸 展筋力.PTジャーナル,2004,38:330-333

【トレンデレンブル グ徴候が陰性となるために必要な股関節外転筋力】
0.8Nm

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/21/4/21_KJ00003128659/_pdf/-char/ja

【まとめ】
以上のように、HHDを使用することで客観的に筋力評価が可能となり、また体重で除することでカットオフ値のエビデンスも多く報告されています。
なので筋力トレーニングをする際は、これらの数値を目標とし、HHDで評価することを推奨します^ ^

そして安定性の高い歩行となると、カットオフ値以上の筋力が必要というわけです。
個別筋でいうと大腿四頭筋、足関節背屈筋、股関節外転筋での報告が多いためこれらの筋の強化か特に重要ですね^ ^

また、筋力は運動単位の発射頻度や数、同期化といった神経性要素と、筋線維数や断面積などで構成されています。

MMTのグレードが低くとも、運動単位の同期化(タイミング)に問題がなければ、歩行時に適切なタイミングで筋収縮がされることで、安定した歩行となる可能性もあります。
なので、動作特異的な評価も合わせてすることも良いと考えています^ ^
DGIなどの歩行に特化した評価もおススメです(^^)↓わ

http://gunma-pt.com/wp-content/uploads/2015/03/dgi.pdf