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回答させて頂きます^^
私なりの考えですが、
①腱板断裂の有無を評価
②筋の状態を評価(短縮・伸張性・筋緊張etc…)
③腱板筋力の評価
まずはこの3つを明確した上で治療に移る必要があります。それが結果的に効率的な腱板機能改善につながると思います。
今回ご提示頂いている症例は上腕骨近位端骨折の保存例ということですが、それ以前に”70歳前半”という個人因子に着目する必要があります。
なぜかというと、骨折の影響で腱板機能が低下したと言い切れないためです。
というのも、70歳では元々痛みがなかったとしても腱板断裂している可能性があります1)。万が一断裂していた場合、断裂筋を単独でトレーニングすることは断裂部位の拡大に繋がる可能性があるため、リスクがあります。
そのため、腱板断裂の有無を明らかにすることは必須です。エコーやMRIが有用ですが、そういった環境がない場合は、以前にそのあたりの話をまとめているので、こちらを参考にされてみて下さい↓
次に筋の状態を評価すると良いと思います。現状座位でのボールを転がす運動や立位で床に手をつけながらのストレッチなど可動域の維持、改善に努められているかと思いますが、腱板筋それぞれの状態を把握すると、よりピンポイントでの介入が可能となります。
代表的なところでいうと、収縮時痛や伸張時痛・圧痛・可動域の評価ですね。可動域制限については以前にまとめたものがあるので、こちらも参考にされてみて下さい↓
そして最後に筋力です。これは物凄くシンプルですが、各ポジションでの内外旋筋力(棘上筋は外転)を確認し、MMT上での左右差を知っておいたほうがいいです。例えば棒体操のように上肢挙上トレーニングを行えば、全腱板を使うことになるので、ざっくりと鍛えることは可能ですが、最終域までもってくるためには、弱化筋の選択的トレーニングが必要です。そこである程度健側と同レベルまで回復した段階で棒体操のような協調的トレーニングに移行するとスムーズです。
このように腱板筋の機能を回復させたいのであれば、まずは状態を把握し、よりピンポイントでのストレッチ、トレーニングを行う必要があるかと思います。トレーニングの方法論も勿論重要ですが、まずは評価の徹底を意識されてみて下さい!
<参考文献>
1)Yamaguchi K et al. The demographic and morphological features of rotator cuff disease. A comparison of asymptomatic and symptomatic shoulders. J Bone Joint Surg Am. 2006 Aug;88(8):1699-704.