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改めてご質問ありがとうございます^^
これは臨床上、物凄く悩みの種となりやすい部分ですよね。
1つずつ状態を整理しながらお伝えできればと思います。
まず痛みがインピンジメントによるものであれば、安静時痛は生じません。例えば肩峰下インピンジメントであれば大結節が肩峰下を通過する外転60〜120°の間でのみ疼痛が出現します。この安静時痛の有無でインピンジメントによる痛みは鑑別できるかと思います。
続いて、腱板断裂についてですが、腱板断裂は必ずしも痛みがあるわけではありません。実際に痛みがなくとも断裂している例は多いです1)。これは大前提として知っておくと良いかと思います。一般的に腱板断裂によって痛みが生じる例の代表的な症状は挙上位から下ろす時の痛みです。上記のやり取りでも出てきたDrop armです。また疼痛部位としても断裂部のみならず、神経由来の痛み(腋窩神経や筋皮神経の支配領域)が出現することもしばしばありますので、これらは簡単に所見が取れるため確認しておくと良いかと思います(ちなみに上腕骨骨折でも神経損傷があれば同様な症状が出ることは考えられます)。
最後に骨折についてですが、本症例に至っては骨折後3ヶ月が経過しているため荷重関節ではない上腕骨骨折部の痛みが出ることは考えにくい印象です。
ただ一般的に骨折由来の疼痛がある場合は骨折部周囲の腫脹や圧痛所見が取れます。また上腕骨であれば上腕骨遠位部から長軸方向に叩いてみて痛みがあるかどうか(骨膜刺激)も確認してみると良いです。痛みの種類からのみで鑑別することは難しいですが、このような諸々の所見を合わせて考えてみると分かりやすいかと思います!
<参考文献>
1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16882890/