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回答させていただきます。
まず用語のおさらいから。
・股関節戦略とは,性急または大きな重心動揺に対する反射として支持基底面内に質量中心を保つもの
・足関節戦略とは、静止立位で重心動揺が小さい時,質量中心を安定性限界に保つために足関節を中心とする反射
と言われています。
基本的には直立立位姿勢の時に、上記のような重心動揺が発生した際に生じる戦略と考えるのが一般的です。
例えば前方に重心が移動すると、
足関節→股関節→ステップと戦略を実行しますよね。
前置きが長くなりましたが、では歩行時はどのようにこの戦略が活躍しているか?について考察します。
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【例①ー狭い歩幅で後方重心となる歩行】
足関節戦略↑
バランス能力の低下により、転倒リスクを下げるために学習された低速度歩行をする高齢者は臨床上多いです。
例えば、速歩きをするように提示しても、中々速く歩けない症例もそうです。
この場合を床反力として見ますと、↓
立脚中期〜後期に、足部中央から前足部まで重心があまり移動しません。端的に言うと、踵中心の荷重で足全体の後方で歩行してるイメージです。
※あくまでイメージで、僅かに前足部に乗ってるのは乗ってます^_^
この方の場合、前足部に乗ることによる外部足関節底屈モーメントが小さく、前方への推進力を得られません。(下腿三頭筋の出番が少ない)
よって、“前進しているにも関わらず、後方にふらつく”という歩行分析が成り立ちます。
こうなると、序盤の基礎に戻ります。足関節戦略の定義を見ると、「重心動揺が小さい時に起こる戦略」とあります。低速度歩行では重心動揺自体は小さいため、足関節戦略が実行され、後方に倒れるバランスを前脛骨筋で持ち耐えるような反応を示します。
これを強調した評価をするには、「更に遅く歩いてみてください。」と提示すると、より背屈筋の活動が見られるのが分かりやすくなります。
このような足関節戦略(前脛骨筋パターン)を使用している症例の場合は、戦略だけで耐えられない時を想定し、【後ろ方向へのステッピング練習】がおススメです。後へのステップは、下腿三頭筋の遠心性収縮から活動から始まり、重心が後ろにいきすぎると前脛骨筋の活動も再度必要となります。
【例②ー前後左右への不意で大きなふらつき時】
股関節戦略↑
今回の定義でもお伝えした通り、股関節戦略は性急または大きな重心動揺に対する反射。とされています。
つまり言い換えると、【性急または大きな重心移動が見られる歩行】時に股関節戦略はみられるということです。
よって、一般的な前進歩行では、股関節戦略といえるような活動は少ないと私は考えています。
では、一般的以外とはいつか?ですが、例えば
○何かを跨ぐ時
この時は、跨いだ側の足を大きく前に踏み出す必要があります。その際に股関節運動が前後に見られます。
○横からの強風に吹かれた時
屋外歩行時だと、まさにこれです。股関節戦略で体幹を立て直そうとし、それでも支持面に止められないなら、ステップが出ます。
○そもそも歩行の転倒リスクが非常に高い時(歩行形態として難度が高い)
例えば、歩行車で軽介助レベルの方を、フリーハンド歩行で歩いてください。なんて言うと、歩行周期ごとのバラつきが多いことは明らかです。
常に転倒しかけながら歩行しているわけですから、ふらつきに対して股関節を前後左右に振り(股関節戦略)、そのふらつきに対して足を踏み出す(ステップ戦略)もみられ、という繰り返しによる歩行もあります。
※個人的には、認知症の方の徘徊や、廃用後の初期の歩行なんかもこのイメージです^_^
歩行難易度として高いので、まずは一段階下げての練習をします。
【まとめ】
足関節戦略は小さい重心動揺で見られるので、この戦略が見られても、歩行難易度としては適切な可能性が高い。
股関節戦略は性急で大きな重心移動を伴う時に見られるので、この戦略が見られたら、歩行難易度としては難しい可能性が高い。
と結論つけさせていただきます。