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回答させて頂きます^^
このような各方向への可動域に問題がないにも関わらず、結帯が円滑に行えないというケースは多いですよね。私も数多く経験してきました。
しかし、よくよく考えてみると、それもそのはずで基本的に結帯動作というのは外転結帯(外転+内旋+伸展)あるはい内転結帯(内転+内旋+伸展)という複合運動になります。ですので、単一方向の可動域は反映されづらいです(勿論ヒントにはなりますが…)
加えて、肩甲骨の動きも出現しますので、原因を精査するのは本当に難しいです。ただここがPTの腕の見せ所でもありますね。そのことを踏まえた上で、本症例情報から少し原因を推察してみようかと思います。
まず本症例が外転結帯だということから推察していきます。
外転結帯と内転結帯では他の伸展・内旋という動きは同じですが、唯一内外転が異なるのみです。
ですので、少し安直ではありますが、肩甲上腕関節の内転制限があるから外転結帯になってしまっていると捉えることはできます。
本症例は内転0°獲得できているということではありますが、今一度内転制限を深掘って頂きたいです。
具体的に申し上げますと、肩甲帯を挙上させた状態(肩甲骨を上方回旋)で内転可動域を測定して見て下さい。よくある代償動作として内転する際に肩甲骨の下方回旋でごまかしているケースが多いので、それを潰すために一度上方回旋位で測定してみると良いかと思います。
万が一そこで制限が見られれば、その内転制限に作り出している要素に対してアプローチを行ったのちに、再度結帯を行ってもらうとよいかと思います。
続いて肩甲骨の動態から推察していきます。
結帯動作時の肩甲骨の動態としては
下垂位〜L5:挙上・内転・前傾
L5〜Th12:挙上・上方回旋・前傾
Th12〜7:下方回旋
このようなことが言われています1)。
本症例は現状L2レベルということで、今後必要になってくる可動域は、Th12までは挙上・上方回旋・前傾、Th12〜7までは下方回旋となります。
そのため、今一度現状の肩甲骨の動態を観察してみて下さい。
最後に、2つほど症例情報から推察してきましたが、個人的な臨床経験の中では圧倒的に内旋制限が結帯制限に直結しているケースが多いです。
実はこの内旋制限の原因として、烏口上腕靭帯の影響があるのではないかと最近考えております。
烏口上腕靭帯は一般的に伸展・外旋・内転を制動しているようなイメージがお有りかと思います。
しかしこのような報告があります。
内旋制限を有する症例に内旋制限への授動術を実施したところ、
関節窩寄り(後方線維)の烏口上腕靭帯の断裂が確認できた。
また、烏口上腕靭帯の断裂が確認できなかった3例は
MRIで烏口上腕靭帯の肥厚が強い例であった2)。
内旋制限に烏口上腕靭帯が関与している可能性があるということです。実際に烏口上腕靭帯は腱板を包むように存在しているとされており、棘下筋も包んでいます。烏口上腕靭帯の滑走不全が起きると、結帯制限にも直結すると考えられるため、一度烏口上腕靭帯も疑ってみるとよいかもしれません。
烏口上腕靭帯のストレッチは伸展・外旋・内転にて行う方法がポピュラーですので、一度それで伸張性や滑走を獲得した上で、結帯を行ってもらうと改善する可能性が大いにあります。是非、お試し下さい!!!
1)高見武志, et al. "結帯動作における肩甲骨周囲筋群の筋活動について." 関西理学療法 11 (2011): 65-70.
2)金澤憲治 et al. 烏口上腕靭帯は肩関節内旋制限に関与するか,肩関節 39.2 (2015): 405-408.