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#6300
池田拓未
キーマスター

お世話になっております!

まず鎖骨骨折の程度から予後を考えますと、

転位の大きさに比例して骨折間に軟部組織が介在しやすく、2cm以上では偽関節の発生率や骨癒合の遷延するケースが著しく増加する¹⁾
とされてますので、レントゲン所見は重要かと思います。ただ今回は手術療法に至ってはいないため、そこまで関連していないようにも思います。

また肩関節拘縮の観点から予後を考えますと、

497例の凍結肩で手術に至って症例は5.6%で、予後不良因子としては初診時60歳以上、糖尿病の合併、初診時下垂位外旋が0°未満であった²⁾との報告がありますので、これらは確認すべき項目かなと思います。個人的にも下垂位外旋制限と内転制限が重度だと、かなりの時間を要する印象にあります。

また実際にどれぐらいの期間がかかるかはかなりのばらつきがあります。

2年以内に治癒や正常化し、予後は良好である³⁾、平均治療期間7年でほとんど自覚症状や機能障害はなくなるが、計測上の拘縮が60%残存する⁴⁾とされています。

個人的な臨床経験的にもこれらの報告は納得がいきます。といいますのも、1年間拘縮肩に対して介入しても、あまり反応が思わしくなかったケースに対して、手術を検討していたのですが、あるときいきなり可動域が大幅に改善したような症例を数名経験したことがあります。未だにこれらのケースでは何がきっかけで改善したのか?の思考が追いついていない現状です。

また少しだけ飛躍しますが、ARCRの術後では、

術後3ヶ月時点のROMが重要で、前方挙上120°、下垂位外旋10°、内旋(結帯)L5以下は2年後の予後不良となる⁵⁾といった報告があります。このあたりの可動域も参考にはなるかと思います。

本症例におきましては、可動域の情報から推察しますと、根気強いリハにより徐々に改善しそうな印象を受けます。ただそこにはアライメントや筋力などの様々な機能面も絡んできますので、なかなか確信に迫る言い方は致しかねますが、これらを参考にしていただけると良いかと思います。

1)Hill JM et al. Closed treatment of displaced middle-third fractures of the clavicle gives poor results. J Bone Joint Surg Br. 1997 Jul;79(4):537-9.
2)Ando A et al. Identification of prognostic factors for the nonoperative treatment of stiff shoulder. Int Orthop. 2013 May;37(5):859-64.
3)Grey RG. The natural history of "idiopathic" frozen shoulder. J Bone Joint Surg Am. 1978 Jun;60(4):564. 
4)Shaffer B et al. Frozen shoulder. A long-term follow-up. J Bone Joint Surg Am. 1992 Jun;74(5):738-46.
5)戸野塚久紘 et al. 肩関節新X線影法の開発単純 X線による関節窩前方部の骨形態評価.肩関節 34:317-320,2010.