返信先: 肩 外転可動域制限について

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#6571
池田拓未
キーマスター

回答させていただきます!


①上腕骨頭が肩峰下をスムーズに通るために、何度可動域が必要か知りたいです。

▷屍体肩で調べられた最大挙上時の外旋角度は、肩甲骨面よりも約20°前方の挙上面で、約35°外旋する¹⁾

このような報告があります。肩峰下を通過する際の外旋角度については私の渉猟しうる限りは見当たりませんでした。

ただこの「35°」という数値は少なからず参考にはなるかなと思います。



②外転制限因子として、僧帽筋過緊張、後方関節包タイトネスのほかに制限はあるでしょうか?②

▷肩甲上腕関節(GH)の外転だけを考えると、肩関節の下方に存在する組織(下関節上腕靭帯、腋窩陥凹など)のタイトネスや腱板、三角筋の筋力低下が挙げられます。

僧帽筋の過緊張というのは、これらがきっかけでもたらされる二次障害であることが多い印象です。

またGHを外転するためには、肩甲骨の上方回旋も必要となりますので、下方回旋筋のタイトネスや上方回旋筋の筋力低下も二次的に絡んでいるかと思われます。



③肩関節外転制限時、評価考え方アプローチ進め方
▷上述したどの組織が外転制限に絡んでいるかを断定する必要があります。

その流れとしては、まずはGHの問題なのか、肩甲胸郭関節(ST)の問題なのかを評価することがオススメです。

肩甲骨の上方回旋を他動的に誘導しながらであれば、GHの外転角度が向上する
→STの問題

肩甲骨の上方回旋を他動的に誘導しても、GHの外転角度が向上しない
→GHの問題

ということが分かります。

これでだいぶ狙いが定まりやすくなります。

またGHが問題だった場合には、腱板の筋力が絡んでいるかを評価します。
骨頭を関節窩(長軸)に押し付けながら外転させることで、可動域が改善する場合は、腱板の筋力が絡んでいることが示唆されます。この際に、下方の伸張感などが出れば、下方組織のタイトネスを疑ったり、大前提に痛みがあれば、何由来の痛みなのか?といったところを精査していきます。

細かなところでいうと、まだまだお伝えしきれていない部分もありますが、まずはこのあたりを参考にしていただければと思います。



④棘上筋や滑液包などが癒着しているかどうかの評価方法
▷まず厳密に癒着を起こしているかどうかの確認する方法は、エコーでしか可視化することができないかと思います。ただ我々としては、体表からできる操作によって炎症なのか、スパズムなのか、癒着なのかを判断する必要があります。


一度こちらの動画をご覧ください。

こちらのようにまずはGHの内転制限があるかどうかを判断します。肩甲骨を上方回旋した状態で、GHを内転させることで制限をみていきます。

もしもこの操作によって内転制限がある場合は、先程の炎症、スパズム、癒着、どれかに該当します。

炎症の場合
→安静時痛や夜間痛などから炎症所見を確認

筋スパズムの場合
→棘上筋の圧痛、収縮時痛、伸張時痛を確認

癒着の場合
→体表からは精査困難 ただ棘上筋の収縮によって徐々に改善されれば、癒着だったかもしれないという予測は可能です。

またこれらが生じた場合に、まとめて滑走不全として捉えられることもあります。これまた抽象的な表現でして、まずは何によって滑走不全が生じているかを明らかにしたほうが良いかと思います。


ちょくちょく話が脱線していますが、このあたりを参考にしていただけますと幸いです。


1)Browne AO et al. Glenohumeral elevation studied in three dimensions. J Bone Joint Surg Br. 1990 Sep;72(5):843-5.