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naoさん、お待たせいたしました。
個別性が高いご質問のため、この返信欄にて回答させていただきます。
まず、
①脛骨高原骨折の影響から。
本骨折は関節内骨折であり骨癒合がされにくいため、脛骨に対し全荷重が加わると疼痛や違和感がある場合があります。
そのため、
【遷延癒合による疼痛や違和感を避ける代償目的として、デュシャンヌ歩行をしている】この可能性があると考えます。
※デュシャンヌ歩行では、膝関節の外部内反モーメントが減少するため、脛骨内側への応力も減少すると考えられます。
ただ、今回の症例は骨折後150日経過している時点で、通常過程で経過しているのならこの影響は少ないとは思います。
もし仮に、骨癒合が遷延化しているor疼痛or違和感が膝にあるのなら、この可能性を念頭に置き、適度な荷重による骨癒合の促進、もしくは荷重量の減らした歩行補助具の提案が望ましいかと思います。
②時間的要素・空間的要素の改善
MMTで4あるにも関わらず、筋力発揮に問題がある。これは筋力発揮の質的側面に問題があるといえます。
そもそも動作において筋力発揮をするには、
両的側面と質的側面があります。前者は単純にMMTで評価が可能ですね。強さの要素とも言い換えられます。
質的側面は、着目している筋がMMTで問題がなく、動作時に筋収縮が【遅れる・そもそも収縮が無い・代償的に違う筋が過剰収縮している】この場合の話になります。時間の要素、空間の要素とも言い換えられます。
今回の症例はMMTで4あるため、後者の質的側面、筋収縮の時間的要素と空間的要素が問題と考えられます。
○時間的要素
筋収縮のタイミングが遅れる場合ですね。
今回の場合は、大殿筋、中殿筋の収縮が立脚期になった時に左右同じタイミングで発生するかを見ましょう。
もし、骨折側の大殿筋や中殿筋の収縮が反対側より遅ければ、これが原因だとします。
アプローチとしては、
①歩行中に目的筋にタッピングをする
②荷重位で反応の良い動作を探す。
歩行速度や歩行中の股関節肢位を変化させ、筋収縮のタイミングの合う歩行の仕方を探し、(横歩きをしたり)荷重位での動作を学習してもらいます。
この辺りが臨床で効果的です。私も実際、時間的要素が問題の場合は②→①の順でアプローチしています。
○空間的要素
これは共同筋間での筋出力バランスの話です。
多いのは、荷重時に、大腿筋膜張筋が優位に活動しその他の外転筋の収縮が弱い。こんなパターンですね。
MMTは【関節運動を行う筋群全体】の評価になりますので、選択的な筋収縮を評価し、それをそのままアプローチに繋げます。
例えば、小殿筋なら
股関節外転0°より20°で筋活動は高まり、また最大筋力の20%で中殿筋より小殿筋が活動量が高まります。
このように、各筋を個別に評価し、弱化している筋[今回は中殿筋と小殿筋]があれば、選択的な強化を行います。
もし、選択的強化後に歩行練習を行い歩容が改善するなら、活動後増強[筋力トレーニング後の筋力発揮の増加]が見られていると考えられので、個別筋の強化をアプローチとして行えばよいかと考えます。
他にも、仙腸関節機能障害でも、剪断力による疼痛を回避するためにデュシャンヌ歩行は生じます。
問題点はいくらでもありますが、今回はご質問いただいた症例の問題点として可能性の高い点を抜粋しました。
臨床に当てはめられる部分があれば、ぜひ活用していただければと思います。